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大阪地方裁判所 昭和47年(わ)4197号 判決

本籍

奈良県御所市大字本馬一一三番地

住居

大阪市都島区高倉町三丁目八番一六号

金融業

小槻泰久

大正一四年一一月一〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官藤村輝子出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金一、八〇〇萬円に処する。

右罰金を完納できないときは、金三萬円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪市都島区高倉町三丁目八番一六号において、金融業を営むかたわら、同市北区角田町九番地所在寿興業株式会社および同区曽根崎新地二丁目四六番地所在大西商事株式会社の監査役をしているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一、昭和四四年分の所得金額が九、七二六、九一一円で、これに対する所得税額が三、四九二、五〇〇円であるのにかかわらず、いわゆる協力預金に対する謝礼金、貸付金に対する利息および手形割引料などの収入を自己の氏名を秘匿して取得し、これらの収入金を架空名義の預金口座に預け入れるなどの行為により、右所得金額中九、二三〇、九一一円を秘匿したうえ、昭和四五年二月二一日大阪市旭区所在旭税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が四九六、〇〇〇円で、これに対する所得税額が一九、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税三、四七二、八〇〇円を免れ、

第二、昭和四五年分の所得金額が一一二、八一六、七三七円で、これに対する所得税額が七二、六二〇、〇〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、右所得金額中一一二、〇三〇、九三七円を秘匿したうえ、昭和四六年二月一七日前記旭税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が七八五、八〇〇円で、これに対する所得税額が赤字(還付)一四、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税七二、六二〇、〇〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示全部につき

一、第一回公判調書中の被告人の供述部分

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する九月二〇日付供述調書

判示第一、第二につき

一、被告人の検察官に対する各供述調書

一、被告人の大蔵事務官に対する各供述調書

一、藤井邦彦、荒木静、南泰吉、楠田虎治、丸山実、丸山一夫、多田隆、吉村明、喜多俊男、菊田明展(昭和四六年七月二八日付)、大西熊吉、桑原セツ子、白川正一、宇原益男、瓜生徳次郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、南泰吉、菊田富蔵(但し二項を除く)、丸山実、荒木博、多田隆、大西熊吉、喜多俊男、宇原益男、金森末広、岡田博、高庄ミツヱの検察官に対する各供述調書

一、荒木静、藤原清美、三和銀行堂島支店、同銀行姫路支店、在田農業協同組合、福徳相互銀行塚本支店、同銀行姫路支店、菊田明展、三栄相互銀行大阪支店、褒徳信用組合茨木支店、三栄相互銀行大阪支店、田那辺道男(昭和四七年一月二七日付)作成の各確認書

一、嵯峨根耕三、井上高明、大坪鯉喜男、北尾初惠、金森末広、岡田博、植田豊男の各供述書

一、福徳相互銀行塚本支店、瓜生徳次郎の上申書

一、褒徳信用組合十三支店、十三信用金庫十三東支店、三和銀行十三支店、福徳相互銀行塚本支店、褒徳信用組合茨木支店、長崎相互銀行福岡支店、西日本相互銀行那の川支店、親和銀行大名支店、筑紫中央信用組合春日原支店、金森末広、三栄相互銀行大阪支店、福徳相互銀行千林支店、神戸銀行梅田支店、尾本勝信、片山達雄、吉井産業株式会社、重田力、吉岡新次郎の国税局に対する各照会回答書

一、国税査察官河上他代作成の各調査報告書

一、国税査察官河上他代作成の調査書および調査てん末書

一、検事本井甫作成昭和四七年一〇月三〇日付特別捜査部長宛報告書

一、第六回公判調書中の証人神谷利夫の供述部分

一、第八回公判調書中の証人安田望の供述部分

一、第一一回および第一五回公判調書中の証人神谷和美の各供述部分

一、第一六回公判調書中の証人南泰吉の供述部分

一、押収してある手帳一冊(昭和四五年押第五四八号の四三)

判示第一につき

一、旭税務署長作成の証明書(昭和四四年分所得税申告書写の分)

一、五十棲千鶴子、原久孝の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、土橋忠一作成の大蔵事務官宛の確認書

判示第二につき

一、旭税務署長作成の証明書(昭和四五年分所得税申告書写の分)

一、福徳相互銀行千林支店、赤間正昭作成の各確認書

一、白川正一、菊田明展(昭和四七年二月四日付)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、徳永信道、植田隆、長野時保の国税局に対する各照会回答書

一、和解調書(大阪高裁第一民事部)写

一、植田豊男作成の各供述書

なお、脱税額計算書、修正損益計算書、貸金利息収入計算書、減価償却費の明細(不動産所得分)は別紙のとおりである。

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、所得税法二三八条一項にそれぞれ該当するので懲役刑および罰金刑を併科することとし、その罰金額を同条二項により、それぞれ免れた所得税の額とすることにし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるので、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役一年に処し、罰金刑につき同法四八条二項により判示各罪の合算額以下に於て罰金一、八〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納できないときは金三万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、同法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 池田良兼)

脱税額計算書

小槻泰久

〈省略〉

修正損益計算書

小槻泰久

自 昭和44年1月1日

至 昭和44年12月31日

〈省略〉

小槻泰久

自 昭和45年1月1日

至 昭和45年12月31日

〈省略〉

減価償却費の明細(不動産所得分)

〈省略〉

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